事例紹介 – Neo(ネオ)分光放射計がフィルターの品質を劇的に向上させた理由とは

Admesyは分光放射計、色彩輝度計、光度計の開発を行っております。これらの測定機は、24時間365日稼働している量産工程での検査や、小規模のニッチなシステムメーカーで使用されています。その一例として、Cutting Edge Coatings GmbH(CEC社)との協業を始めました。

CEC社は、世界的に有名な独レーザーゼントラムハノーバー社から2007年にスピンオフして設立されたイオンビームスパッタリング(IBS)成膜装置の開発に従事している企業です。

CEC社のIBS成膜装置Navigatorは、研究開発用の高性能成膜装置から工業用量産用の装置まで手掛けており、深紫外・可視・赤外までの光波長に対応した、最高品質の成膜プロセスを実現します。レーザーゼントラムハノーバー社とCEC社の30年に渡るIBSコーティングの経験を結合させた、Navigator IBSシステムは、HRコーティング、ARコーティング、複合フィルター、その他様々なコーティングといった非常に高性能なレーザーコンポーネントや様々な光学フィルターのコーティングを製造することができます。

CEC社のIBSコーティングシステムの独創的な利点は、BBOM(Broad-Band Optical Monitoring)と呼ばれる分光薄膜厚さ制御システムです。このシステムは分光透過率測定を元にしており、リアルタイムでプロセスを監視・制御します。

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干渉フィルターの製造

AdmesyのPrometheus測色計シリーズに使用されているような高精度な干渉フィルターは、透明なウェハー基板上に酸化物材料を交互に薄膜を積層して製造されます。この薄膜層は、屈折率が高いものと低いものが交互に重なっています。フレネル方程式を応用した巧妙なソフトウェアアルゴリズムにより、最適な受光量が計算されます。アルゴリズムが受光量を最適化して、ユーザーが定義した目標とするフィルター特性を実現させます。

目標とするフィルターの高い精度を達成させるためには、各層が正しい厚さで成膜されていることが不可欠です。CECのIBSコーティングシステムでは、原子層単位で塗布していきます。この工程は数時間を要し、常に管理をする必要があります。ここで、前述のBBOM(Broad-Band Optical Monitoring)が活躍するのです。

優れたリニアリティの必要性

初めに薄膜を塗布しない状態で基準線の測定を行います。その後、薄膜を生成している間、透過率の変化を継続的に測定します。

この測定には2つの役割があり、一つは、現在形成されている層の厚さを計算します。透過率は材料ごとに決まっているので、計算が可能です。このようにして、プロセスは管理されますが、実際の層の厚さは、算出された目標の厚さとわずかに異なることがあります。これは、層の材料の僅かな、しかし避けられない不均一性によるもので、透過率の材料定数に影響を与えます。混入物の量や種類がわからないと、目標とするフィルター性能に悪影響が出てしまいます。

このような小規模かつ不要な偏差に対処するため、フィルターの受光量は動的に最適化され、後続の層が実際の条件に対応した補正がされるようになっています。これが、正確な分光測定が、最高のフィルター品質を実現する鍵である二つめの理由です。

分光放射計の精度と再現性は、目標とする品質の実現に対し直接的に影響を与えます。暗電流や波長校正が完璧に施されていることに加えて、分光放射計のリニアリティはここでは特に重要な要素となります。理由は、コーティングの実行中、生成された積層の絶対透過率、つまり製造中のフィルターは、生成された層ごとに常に変化するためです。そのため、たとえ低い透過率の値であっても、分光器の信頼性と予測可能なリニア応答を得ることが重要です。そうでないと、透過率の変化は測定の不確実性を高め、ひいては、層の厚みの計算精度に影響を与えることになります。

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分光放射計プラットフォームAdmesy社Neoシリーズのご紹介

CEC社はAdmesyと協業をすることになり、この課題を解決するために、新型の分光放射計Neoのプラットフォームが採用されました。生産されるフィルターは現在、より厳しい公差に対応できるようになりました。Neoの綿密な光学的・機械的構造は、このような用途、もしくは同様の用途において最高の光学性能を保証します。また、独自の工業仕様レベルの堅牢なカプラーと付属のSDKにより、CEC社のコーティング装置のような民生ソリューションへのハードおよびソフトウエアの組み込みを容易に行えるのです。