ケーススタディ - 透明な構造物の半球状の光透過の標準化測定方法

Keely Portway氏は、研究者チームが構造ガラス、織物、プラスチック、農業用スクリーンやネットなどの透明材料の半球状の光透過の新しい測定方法と測定機をどのように開発したのかについて解き明かします。

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農業におけるフォトニクスや光学ベースの技術の利用は、データ収集や分析、病気の検出、ピッキングや選別、廃棄物の防止、さらには農機具や農薬が地域の野生動物を阻害したり傷つけたりすることを防ぐといった用途でますます一般的になってきています。

人口の増加や食糧需要の増加により、この種のテクノロジーは、農業業界がより効率的な方法でかつ、より有害な化学物質を使わずに持続可能な食糧供給をするために、非常に貴重なものとなっています。しかし、研究者、学者、ビジネスパートナー達が、この分野でより高度なソリューションを開発し、さらに多くの活用事例を広げていく必要があります。

例えば、オランダのヴァーヘニンゲン大学・研究所のヴァーヘニンゲン温室栽培研究チームは、温室やその他の透明の農作物保護用の構造物内の作物が得られる日射量や光合成有効放射量を測定する方法を探していました。

この用途の課題は、これらの構造物に使用されている材料(構造ガラス、織物、プラスチック、スクリーン、ネット)が、材料の半球状の光透過を測定することで特性評価される点です。植物が利用できる日射量や光合成活性放射量を測定するためには、垂直入射光に対する光透過特性よりもはるかに適した光学特性です。

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あらゆるの方向から

主席研究員のGert-Jan Swinkels氏は、次のように説明します。「温室園芸は重要なビジネスです。特に日照時間が短い国では、被覆材(北欧では通常ガラス)の透過率が、作物の収穫量や収穫できる作物のキログラム数を左右するため非常に重要なプロパティです。温室の場合、作物価格が高くなる時期(冬期)は、曇天で太陽から照射される光が少なく、逆に拡散光の割合が最大75%にもなるため、半球状の光透過は垂直方向の光透過よりもはるかに優れた指標となります。そのため、半球状の光透過、つまりあらゆる方向からの光を測定できるようにする必要があると考えています」。

"半球状の光透過、つまりあらゆる方向からの光を測定できるようにする必要があると考えています。"

しかしこれは一般的にある測定方法ではなかったため、WURは独自に測定装置を開発しました。Swinkels氏は更に続けます。"長い間、私達は、本来温室ガラス用に開発され、2018年に改訂されたNEN 2675規格に従って、ビジネスベースでこれを測定できる数少ない企業あるいは研究機関のひとつに過ぎませんでした"。

そこで大学側は、Admesyに市販可能な測定機の開発協力を依頼しました。そのため、全ての関係部門は測定機を購入して、新しく開発した規格に従って測定することができるようにしました。Swinkels氏は次のように説明します。「新しい規格は、その規格に従って測定できなければ意味がないのです」。

既にAdmesyには個々の要件に合わせた様々な用途の製品があるため、まずは共同でどのような仕様が必要かをしっかりと調査しました。Admesy社CEOのSteven Goetstouwersは次のように説明します。「私達は基本的に、まずWURが持っている内容と、実際に行われている測定がどういったものであるかを確認することから作業を開始しました。更に規格内容についても検証します。というのも、私達は今までの技術的な選択肢に縛られることがないよう、常に規格そのものから遡って検討するようにしているからです。なぜなら、工場やガラス測定では、「一般的な」技術をもった人しか操作できないかもしれないからです。」

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課題

このソリューションに取り組むにあたって、両社が直面した課題として非常に高い精度が要求されました。Swinkels氏は次のように説明します。「特にトマトのような野菜では、1%の光量増加は約0.7~1%の生産量の増加につながるという科学的な法則があります。そのため、生産者は材料の透過性を10分の1の単位で欲しています。規格ではそこまでの精度を必要としていませんが、それでも生産者は最大限の精度を求めますから、特にガラスの場合はそれが難しいのです。標準的な測定は常に透明ガラスを対象としておりますが、温室栽培の場合は、生育に有利なこともあり、拡散ガラスを使用する傾向があります。拡散材の透過性を測定するのはかなり複雑で、特に高角度の入射光の場合は大きな誤差が生じやすいのです。ですから、これはかなり難しいことなのです。

"拡散材の透過性を測定するのはかなり複雑で、特に高角度の入射光の場合は大きな誤差が生じやすいのです。"


これらの課題を克服するカギとなったのは、コラボレーションでした。Goetstouwersは次のように説明します。「新しい手法の測定に取り組む際に興味深かった課題の1つは、使用できる標準サンプルがなかったことです。WURは様々なガラスを扱った長年の経験があり、妥当な数値とその逆も知っています。私達は、このガラスが比較的正常なガラスであると信用して、それを私達の装置に装着して測定し、その違いとその違いに基づく変数について議論することができました。

Admesyのガラス透過測定ソリューションは、システムを覆う筐体、広波長LEDコリメート光源、自動ガラスマウント、基準光源付き積分球、Admesy社製Neoシリーズ分光計を含む完全密閉型の吊り下げ式ゴニオシステムです。光源はフルスペクトルのLED光源で、コリメーティングレンズシステムを搭載しています。熱的に安定化されており、CRI 98のフルスペクトルを出力します。コリメーティングレンズシステムは、90 %の輝度均一性、カラーシフト、Δx・Δy < 0.002、スポットサイズ径110 mm、ビーム発散3 %の拡散光スポットになります。

Neoは、20年近くにわたり民生用製品での経験をもとに開発された汎用性の高いプラットフォームですが、より幅広い用途に対応する分光測定ソリューションを実現することができます。高い信頼性を持ったRheaシリーズの分光計をベースにしており、リニアリティ、S/N比、波長精度、絶対精度の面で、すでに非常に高い光学性能を持つハイエンドな測定機となっています。

Swinkels氏が明かすように、このシステムはWURのチームにより承認されました。「WURは自社のシステムで測定を行い、Admesyのシステムで得られた結果と比較してみました。その結果、WURの装置で測定した結果とほぼ同じであり、必要とする精度の範囲内であることが確認されました。」

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Steven Goetstouwersは次のようにまとめています。「私達は現在、0.5メートル✕0.5メートルのサンプルサイズを自動で測定できるシステムを提供できますが、手動であれば、より大きなサンプルにも対応できる筐体を用意しています。WURのシステムを再現しなかったのは、私達はより科学的なシステムから工場に設置できるようなシステムに移行することを考えていることが主な理由です。現在は、基本的に市場検証の段階ですので、近々、潜在顧客からサンプルをお預かりして、ソリューションを展開する予定です。」

"私達は現在、0.5メートル✕0.5メートルのサンプルサイズを自動で測定できるシステムを提供できますが、手動であれば、より大きなサンプルにも対応できる筐体を用意しています。"

農業関連企業にとって、複雑なパラメータをシンプルに評価できたり、他のサンプルやシステムでの測定結果と比較することができるといった標準化測定ソリューションを入手することができるようになり、農業関連の企業にとって新たな時代がスタートしています。

ホワイトペーパー「透明な構造物の半球状の光透過の標準化測定方法」はこちらからダウンロード頂けます。