事例紹介 – 標準分光計とは?

エレクトロオプティクス誌のキーリー・ポートウェイ氏が、なぜ分光放射計の精度がそれほど重要なのか、その精度を決定づけるパラメータとは何か、そしてどのような用途において最も多く使用されるのかについて明らかにします。

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分光計は、電磁放射線の波長を検出・分析する装置です。分光計という言葉は幅広く、さまざまなタイプの装置が含まれます。例えば、分光放射計は可視領域および隣接する波長領域の光の放射スペクトルを測定します。多くの分光放射計にはシリコン製のセンサーが使用されており、紫外線(UV)、可視光線(VIS)、近赤外線(NIR)の波長域を測定することができます。

精度の必要性

さまざまな測定内容において、スペクトルの測定結果は特定の不確実性の範囲内において正確なものと言えます。つまり、「真の」測定値というものは決して正確には分かりませんが、ある確率の範囲内において測定することができるのです。

なぜその不確実性が重要なのでしょうか?内容によっては、さまさまな測定の不確実性は問題にならないことがあります。例えば、機械部品の公差を特定する場合、僅かなミリメートルレベルの精度が必要となります。しかし、ある人が生涯でどれだけの距離を自転車で走ったかを記録するとしたら、1,000kmあるいは10,000kmだったとしても、それは妥当な距離と言えるでしょう。スペクトル測定においても同様で、用途によって要求される精度が大きく異なることがあります。このように長さ・距離を計測する場合に、不確実性が1つの数値として用いられることがあるわけですが、対照的に分光放射計の精度を評価する上では、一つではなく複数の数値を考慮する必要があります。

精度の6大要素

できるだけ高い精度を目標にする場合、6つの重要な要素を極めて正確に取り扱う必要があります。最初の4つは分光放射計の校正に直接関係します。どの信号にも、例えば温度の影響によるなどといったノイズ成分があります。そのノイズレベルは、生の測定信号レベルから差し引く必要があります。これは、光信号が得られないような暗所の測定を行うことで実現できます。この場合、専用のダークシャッターが、分光計内のセンサーの前段であらゆる光を遮断してくれます。あるいは、アルゴリズムによるアプローチによって暗電流を補正することも可能です。AdmesyのNeo分光計は、両方の方法で暗電流補正を行うことが可能です。

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もう一つの校正手順として波長校正があります。その場合、カドミウム、ネオン、クリプトンなどの既知の波長をピークとした光源を標準として使用します。

絶対校正は特に重要であり、最終的に分光計の精度に大きな影響を与えます。この場合、校正済みのハロゲン光源を「真の」値の標準として用います。米国のNISTやドイツのPTBなどの国立標準機関がそうした光源の標準データというものを提供しています。しかし、この校正データには既に特定の不確実性が存在しています。分光放射計はそれ以上の精度を実現することはできないため、実現できる精度自体には限界があります。Admesyでは、このボトルネックに対処する校正光源(特許出願中)を開発して、校正光源の不確実性を小さくすることを可能にしました。

分光計に使用されるミラーなどの光学素子は、測定光の偏光に影響を与えるため、光の偏光が測定値において考慮しなくても問題ない程度の影響で済むことを保証するには、巧みな光学設計が重要となります。ここにおいても、先に述べています弊社開発(特許出願中)の校正光源によって、その影響を小さくしています。

上記によって最終的にリニアリティが校正され、信号レベルが低くても高くても、またその中間のレベルであっても、測定結果が正しいことを保証できるようになります。また、光の波動というものは、さまざまな方向に振動(偏光)していく可能性があり、実際にそのように振動(偏光)していきます。多くの場合、特定の方向に振動(偏光)していくということはないのですが、TFTディスプレイやサングラスなどの特定の用途では、特定の振動(偏光)方向が存在します。そうした光の振動(偏光)が測定に影響を及ぼすことがあってはなりません。そのため、制御が必要な5つ目のパラメータが、偏光エラーとなります。

分光計に使用されるミラーなどの光学素子は、測定光の偏光に影響を与えるため、光の偏光が測定値において考慮しなくても問題ない程度の影響で済むことを保証するには、巧みな光学設計が重要となります。

最後6番目のパラメータも分光計の光学設計に関係します。それは迷光です。装置内に "導かれた "光だけの波長を測定・記録できるように配慮することが必要であり、装置内部で変に反射したり、センサーに無制御の光が入り込むことがあってはならないのです。

要求の厳しいアプリケーション

ハイエンド分光計ならではの厳しい公差が活かされるアプリケーションとして、薄膜コーティングなどがあります(Admesyの事例紹介をご参照ください)。Admesyの分光計は、光学フィルターの製造にも使用されています。新たな分野としては、非常に低い信号レベルを正確に検出する必要があるラマン分光が挙げられます。また当然ながら、その測定値を他の分光計の校正に使用する場合には、標準器レベルの分光計が必要です。こうした用途においても、Admesyの機器はお客様に首尾よくご利用頂いています。

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Neo - 新たなリファレンス

AdmesyのNeo分光計の目標は、限界に挑戦し、標準レベルの新たな分光計を提供することでした。Neo分光計は、最高の光学性能を保証するために十分に考慮された光学設計と機械設計によってそれを実現しています。

また、Neoシリーズは、卓越した直線性、最高峰の波長における絶対精度、低い偏光誤差、優れた低レベル性能といった特徴があります。

この事例紹介は以下のURLからもダウンロードいただけます。

'What makes a reference spectrometer?'