ホワイトペーパー: ハイエンド分光放射計の校正精度の向上
分光放射計の精度は、光学設計、機構設計、電気回路設計、製造時の公差など様々な要因に依存しています。また、分光計自体の校正も正確な分光測定を実現するための重要な要素です。このホワイトペーパーでは、分光放射計の精度を向上させるためのAdmesyの新しい校正コンセプトをご紹介します。
分光放射計の校正プロセスには4つのステップがあり、絶対校正は最終段階で行う重要なステップです。トレーサブルな絶対校正を実現するためには、ハロゲンランプが参照標準として使用されます。こうしたランプは、NIST(米)やPTB(独)などの著名な国立計量機関で校正されています。しかし、校正データに伴う不確実性が、上位クラスの分光放射計における高い精度の実現の制約要因となっていました。Admesyはこの問題に対処するため、校正ランプ(特許出願中)を開発しました。これは、校正データの不確実性を低減し、分光放射計の測定において更なる高精度を実現することを目的としたものです。
分光放射計校正の4つのステップ
分光放射計の校正は、以下の4つのステップで実行されます:
暗電流雑音(ノイズ)補正
まず、ステップ➀として、暗電流雑音(ノイズ)の補正を行います。これには、内蔵シャッターを閉じた状態で暗測定を行う方法と、アルゴリズムによるアプローチの2つの方法があります。Admesyでは、暗電流雑音(ノイズ)補正において速度と精度の両方を保証する、特別なアルゴリズム・ソリューションを提供しています。さらに、NeoおよびPrometheus分光放射計はメカニカルシャッターを搭載しており、正確な校正の実現のために二つのオプションをお客様にご提供しています。
リニアリティ(直線性)の校正
ステップ➁では、低信号レベルと高信号レベルの両方において正確な測定を保証するために、直線性(リニアアリティ)の校正に焦点を当てます。「Neo(ネオ)分光計がフィルターの品質を劇的に向上させた理由とは」と題した事例紹介では、優れた直線性(リニアリティ)校正の重要性についてさらに詳しく説明しています。
波長校正
ステップ③は、既知のスペクトル線の光源のピークを用いて波長を校正することです。こうした光源として、カドミウムやクリプトン、水銀アルゴンなどが例としてあげられます。
絶対校正
ステップ④は、絶対校正です。この絶対校正には、校正用光源(ハロゲンランプ)などのトレーサブルな校正標準器を使用します。PTBなどの計量機関は校正光源とするランプを測定し、測定の不確実性を含む定量データを提供します。一連のトレーサブルな分光放射計校正作業では、不確実は全て蓄積されていきます。校正用ランプの定量データとその固有の不確実性は、一連の校正作業の初期過程にあるため、機器の最終的な精度は、トレーサブルな校正用ランプの不確実性によって最終的に高い精度を実現することが難しくなってしまいます。
例えば、分光放射輝度計の校正の不確実性を定量計算してみると、校正ランプに関連しないパラメータの不確実性は0.5%に満たないことが分かった。一方、校正ランプに関連するパラメータの不確実性は約2.5%と比較的高かった。従って、校正ランプに関連する不確実性を削減することで、校正された分光放射輝度計の精度を大幅に向上させることができることになります。
従来の校正ランプの特性と限界
従来の校正装置では、校正ランプは調整式の開口部から積分球内に光を照射します。積分球を使用する目的は、積分球後部の開口部に均一な光出力を作り出すことです。輝度(Y)センサーは、校正での測定を行う前に光出力レベルを調整するために利用します。
最高の精度を実現するために、計測機関では校正プロセスに走査型分光計を採用しています。この測定には通常8時間ほどかかります。測定中、光源のスペクトルに2つの変化が現れます。第一に、フィラメントが燃え尽きて細くなるにつれて、光源の輝度は時間の経過とともに徐々に増加して光出力が上昇します。第二に、フィラメントが燃え尽きるにつれて高温になり、ランプのスペクトルが傾斜します(ブルードリフトと呼ばれています)。
第一の変化による影響は、校正手順の最初と最後に輝度を平均化することで対処します。
しかし、第二の変化による影響は考慮されていないため、比較的高い不確実性の原因となっています。時間の経過に伴うランプのスペクトルパワー分布の変化が避けられないことが、校正用光源を約50時間しか利用できない理由です。そしてこの課題を解決する必要がありました。
ハロゲン校正ランプのもう一つの欠点として、短波長(青色)領域のエネルギー出力が低いことがあげられます。その結果、短波長域では迷光の干渉を受けやすくなります。
Admesy社 Crius(クリウス)ハロゲン校正光源:改良された機能と性能
Admesyは、フィルターコーティングにおける豊富な経験を活かし、この最先端のマルチチャンネルバンドパスセンサーを自社開発しました。この特許取得プロセスによる進歩により、経時的な波長傾斜(ドリフト)の監視と補正を可能にし、その結果、ランプの一般的な使用寿命である50時間を通して、校正データの不確実性を大幅に低減できるようになりました。さらに、設計改良により、50時間を超える長期間の使用が可能になり、校正ランプに関連する全体的なコストを効果的に削減することができるようになりました。さらに、3つのセンサーを搭載させたことで冗長性が確保され、高精度の傾斜補正が保証されます。
また、ハロゲンランプの不利益なスペクトルパワー分布に対処するため、カスタムの "青色改善 "フィルターを実装しています。このフィルターにより、長波長(赤)と短波長(青)のエネルギー比が6倍近くから約2倍に効果的に減少できます。その結果、より優れた信号対雑音比が実現され、短波長領域の迷光の影響が最小限に抑えられます。この改良により、校正用光源の全体的な性能が大幅に向上します。
校正におけるブレークスルー: 従来の方法と比較したAdmesyの改良版アプローチ
Admesyは、従来の校正光源の限界を超える画期的な校正コンセプトを導入しました。この革新的なアプローチは校正のあらゆる重要な側面に対応し、その結果、不確実性が大幅に低減され、ハイエンド分光放射計の実現可能な精度が大幅に改善されます。2024年から、この最先端の校正コンセプトは、AdmesyのNeoとPrometheusの両方の分光計に導入され、ユーザーに既存のソリューションに対する明確な優位性を提供します。
Criusハロゲン校正光源への専用アクセス
さらに、一部のユーザーにはこの画期的な校正技術を組み込んだCriusハロゲン校正光源にアクセスする機会が提供されます。これにより、生産設備での分光放射計の検証が可能になるだけでなく、お客様の社内の校正プロセスも簡素化されることになります。詳細についてご興味のある方、またはこの限定ユーザーグループに入りたい方は、お気軽に弊社までご連絡ください。